月曜日, 10月 15, 2007

中国初の独禁法成立

中国初の独禁法成立
 中国で長年にわたり立法作業が行われてきた独占禁止法が、ついに8月30日、全人代常務委員会において採択された。同法は、2008年8月1日から施行される。

1.概要
 独占禁止法は、全8章56条で構成されている。その主な内容は以下のとおりである。
(1)独占行為の定義:
 独禁法が規制する「独占行為」とは、(1)事業者による独占協定(この中には競争関係にある事業者間のカルテルおよび取引の相手との再販価格の制限などの協定も含まれている)(2)事業者による市場の支配的地位の濫用(3)競争を排除、制限する、またはその恐れがある事業者結合――が含まれる。独禁法は、上記3種類の独占行為について、それぞれ1章を設けている。そのほか、独禁法は1章を設けて、行政権力を利用した競争の排除、制限行為を禁止することについて定めている。独禁法にいう「事業者」には、商品の生産、経営またはサービスを提供する個人、法人およびその他の組織が含まれる。
(2)独禁法の適用範囲:
 中国内の独占行為のほか、中国内の市場に競争排除、制限効果を及ぼす中国外の独占行為にも適用される。これは、中国外の企業結合についても、中国の独占禁止審査を受けることを要求する根拠となる。
(3)独禁法関連主管機関:
 国務院に新たに独占禁止委員会が設立される。独占禁止委員会は、独占禁止分野の行政行為を組織、調整、指導する役割を負うが、独禁法の執行は行わないようである。独禁法の執行は、国務院が定める「独占禁止法執行機構」により行われる。「独占禁止法執行機構」がどの政府機関に当たるか法律上は明確にされていない。ちなみに、現行法上、企業買収の独占禁止審査機関は商務部および国家工商行政管理総局である。
(4)関連市場の定義:
 独禁法において「関連市場」とは、事業者が一定の時期に特定の商品またはサービスについて競争する場合の、当該商品またはサービスの範囲および地域的な範囲を指す。
(5)独占行為に対する調査:
 独占禁止法執行機構が独占行為を調査する権限を有する。独占禁止法執行機構は、調査のために、立入調査、関係者の尋問、関連書類などの閲覧、複製、関連証拠の差し押さえ、銀行口座の調査などができる。いかなる企業および個人も、独占行為と疑われる行為について、独占禁止法執行機構に通報することができる。
(6)罰則:
 各種独占行為について、事業者に課される罰金およびその他の処分などについて定めている。たとえば、独占協定を形成し、かつ実施した場合、関係事業者には、その前年度の売り上げの1%以上10%以下の罰金を課すことができる。

2.事業者結合に関する審査
(1)定義:
 「事業者結合」とは、合併、株式および資産の買収およびその他の方式により、事業者が他の事業者の支配権を取得すること、またはその他の事業者に決定的な影響を与えることができるようになることを指す。
(2)申告基準:
 事業者結合が、国務院の定める申告基準に達した場合、事前に独占禁止法執行機構に申告しなければならず、申告をすることなく事業者結合を実行してはならない。独禁法は、国内企業間の事業者結合と外国企業との事業者結合を区別して定めていないし、具体的な申告基準も定めていない。現行の「外国投資者による国内企業の買収に関する規定」が定める、外国投資者による国内企業の買収および外国企業間の買収の場合の、中国における申告条件がそのまま適用されるか、または新たな基準を定めるかは、不明である。
(3)二段階審査:
 事業者が上記により申告をすると、独占禁止法執行機構が30日間の一次審査を行い、さらに二次審査を実施するかどうかを決定する。30日以内に二次審査を実施しない決定を下した場合、および30日を経過するまで何も決定しない場合は、事業者は結合を実施することができる。すなわち待機期間は最低30日である。
 独占禁止法執行機構が30日以内に二次審査を実施すると決定した場合は、さらに90日間の審査をし、事業者結合を禁止するかどうかを書面で決定する。事業者が同意する場合、関連書類が不足がある場合などには、この期間をさらに最高60日間延長することができる。これにより、待機期間は、一次審査の期間を含め、最長180日になる可能性がある。

2.事業者結合に関する審査
(4)審査の要素:
 独占禁止法執行機構が事業者結合の審査をするに際しては、主に以下の要素が考慮される。
 【1】 結合に参加する事業者の関連市場におけるシェアおよび市場に対する支配力
 【2】 関連市場の市場集中度
 【3】 事業者結合の市場参入、技術の進歩に対する影響
 【4】 事業者結合の消費者およびその他の関連事業者に対する影響
 【5】 事業者結合の国民経済の発展に対する影響 
 【6】 その他市場競争に影響を及ぼす要素

(2)提出書類:
 事業者結合について申告する場合、以下の書類を提出する必要がある。
 【1】 申告書
 【2】 結合が関連市場の競争状況に及ぼす影響の説明
 【3】 結合契約または協議書
 【4】 結合に参与する事業者の直近会計年度の監査済財務諸表
 【5】 独占禁止法執行機構が定めるその他の必要資料

(3)審査結果:
 独占禁止法執行機構は、審査の結果、事業者結合が競争を排除・制限する効果を有する、またはその恐れがあると判断する場合、事業者結合を禁止する決定を下す。ただし、事業者が、当該事業者結合が競争に与える有利な影響が不利な影響を明らかに上回ること、または事業者結合が社会公共の利益に合致することを証明できる場合は、禁止しない旨の決定を下すことができる。
 事業者結合を禁止しない旨の決定する場合、独占禁止法執行機構は、事業者結合が競争に与える不利な影響を減少させるための制限的条件を加えることができる。
 独占禁止法執行機構の上記決定に不服である場合、事業者は、行政再審手続きに従い、再審を要求することができ、再審結果を不服とする場合は、裁判所に行政訴訟を提起することができる。
(4)除外規定:
 事業者結合が下記のいずれに該当する場合、事業者結合について申告をする必要はない。
 【1】 事業者結合に参加する一方の事業者が、他の各事業者の50%以上の表決権を代表する株式(持ち分)または資産を有する場合。
 【2】 事業者結合に参加する各事業者のそれぞれ50%以上の表決権を代表する株式(持ち分)または資産が、結合に参加しない同一の事業者に所有されている場合。
 すなわち、上記条件を満たす親子会社間、姉妹会社等関連会社間の事業者結合については、申告をする必要がない。
(5)国家安全審査:
 外国資本による国内企業の買収またはその他の方式による事業者結合への参与が国家の安全に関係する場合、上記事業者結合の審査のほかに、別途関連規定に従い国家安全審査を受ける必要がある。
(6)現行法規定との関係:
 現在、中国では、外国企業による買収に対して独占禁止審査をすでに行っている。その根拠になる法規定は、商務部、国家工商行政管理総局等6部門により制定された「外国投資者による国内企業の買収に関する規定」(2003年施行、06年改正)であり、当該規定は、申告の基準、時期などについて定めている。また、商務部により、07年3月に外国投資者による国内企業の買収に関する独占禁止申告のガイドライン」が公布され、申告に必要な資料の詳細などがさらに明確に定められた。
 現在、上記規定の基準に符合する外国企業による中国企業の買収または外国企業間の買収に関しては、上記規定およびガイドラインに従い、審査を行っている。08年8月1日に「独占禁止法」が発効した後、現行法の規定および仕組みがどのように調整されるか、注目されるところである。

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