月曜日, 4月 06, 2009

中国の債権回収における紛争解決方法の選択

中国の債権回収における紛争解決方法の選択
 1.紛争解決の方法

 紛争が発生した場合、当事者間で友好に協議した上で解決することがほとんどですが、いくら協議しても解決できない場合には、仲裁や訴訟を通してうまく解決に導くこともできます。

 2.日本の裁判所を避けるべき

 国内契約(当事者がいずれも国内企業)の場合、当然中国の裁判所が管轄裁判所となるため、日本の裁判所を管轄裁判所として指定することはできません。これに対して渉外契約(当事者の一方が外国企業)の場合には、契約当事者が海外の裁判所と中国の裁判所のいれずかを管轄裁判所に指定することが可能です。

 実務では中国における日系企業の場合、日本の裁判所を管轄裁判所と約定する渉外契約がよく見受けられます。しかしながら、これは実のところ日本企業にとってきわめて不利になる約定であるために注意が必要です。

 現在のところ、中国と日本の両国間に相手国裁判所の判決の執行を認める国際条約がないために、日本の判決を中国で執行することが実はできません。そのため、日本の判決を受けて負けてしまった場合、当然日本の法律にのっとり中国企業に賠償をしなければなりませんが、勝った場合においても、相手企業が日本に財産を保有する場合は別として、前述のとおり中国において日本の判決の執行は認められないために、日本での勝訴判決は中国国内においては何の意味も持たないただの紙切れにしかすぎません。以上のことから、訴訟による紛争解決を選択する場合には、中国の裁判所を選ぶことがベターです。

 3.地方保護主義への対策

 中国の裁判所を管轄裁判所として指定する場合、適切な裁判所を選ぶことで地方保護主義にある程度対応することが可能です。現在、契約当事者は?被告所在地、?契約履行地、?契約締結地、?原告所在地、?対象物所在地の中から裁判所を管轄裁判所として指定することができます(民事訴訟法25条)。これを利用して、地方主義の傾向の少ない司法が比較的公平と思われる地域、たとえば北京や上海などで契約を締結した上で、契約締結地の裁判所を管轄裁判所に指定することで、地方保護主義に対し一定の対抗策を講じることが可能です。

4.仲裁を選んだ場合の留意点

 当事者間で紛争解決を仲裁機関に委ねることも、紛争解決における手段の一つです。訴訟と仲裁、どちらもそれぞれメリット、デメリットがありますが、仲裁による解決がより望ましい思われる場合、事前に書面の仲裁合意を締結する必要があります。

 仲裁機関については、日本あるいは中国のどちらの仲裁機関でもよく、または第三国の香港、シンガポール、スウェーデンストックホルム商業会議所仲裁裁判所においても可能です。しかしながら実際の紛争においては、日本の当事者は日本での仲裁を、中国の当事者は中国での仲裁をといったふうに、自国の仲裁機関をお互いに主張し譲らないパターンがよくあります。このような場合には、まったく別の第三国の仲裁機関に要請するか、相互主義を採り、日本の当事者が仲裁を申立てた場合は中国の仲裁機関に、中国の当事者が仲裁を申立てた場合は日本の仲裁機関にするといった方法がよく見受けられます。

 どこの仲裁機関にするのか、契約の準拠法に従う場合も考えられます。つまり、日本法を準拠法にしている場合日本の仲裁機関で仲裁の申立てを行い、中国法を準拠法にする場合には中国で仲裁を行うというものです。

 中国法を準拠法として外国の仲裁機関で仲裁を行う場合、これらの仲裁機関の仲裁人が必ずしも中国法を熟知しているとは限らず、また関連経験が少ないため正当に紛争を解決できるのかという点についても疑問の余地が残るところです。また中国において外国の仲裁機関が下した仲裁判断を執行するためには、中国の裁判所にこれを申立てる必要があります。結果的に執行の側面から見た場合、中国の仲裁機関による仲裁判断が一番手間がかからないということになるでしょう。

 現在中国には180箇所以上の仲裁機関があり、そのうち中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)が渉外の仲裁を多く引き受けており、関連経験が豊富なうえ、その公平な仲裁判断も評価を集めていることから、最近はここに仲裁をゆだねるケースが増えてきています。

5.有効な仲裁合意を得るには

 仲裁で紛争を解決すると当事者間で合意があったにもかかわらず、仲裁合意が無効であったために訴訟により紛争を解決せざるを得なかったケースが実務でもよく見られます。

 有効な仲裁合意となるためには、その内容として仲裁請求の意思表示、仲裁事項及び選定する仲裁委員会が含まれていなければなりません(「仲裁法」第16条)。仲裁事項又は仲裁委員会に関する約定がなく、又はそれが不明確なときは、当事者が補充合意をしない限りその仲裁合意は無効となります(「仲裁法」第18条)。したがって、仲裁合意を締結する際には、仲裁請求の意思表示に加えて、仲裁事項及び仲裁委員会に関しても明確に定めるよう注意する必要があります。

 実際のケースでよくある無効とされた仲裁合意を、一部ですが以下に示してみました。仲裁合意を作成する場合には、以下のような不明確な内容が含まれていないか留意する必要があるでしょう。

 (1)「本船荷証券から生じる全ての紛争について、中国の法律に基づき中国の人民法院で審理し、又は中国で仲裁を行う」

 (2)「本契約に定めのない事項について、双方は友好的に協議して解決するものとする。解決できないときは、関係部門に付託し仲裁を行うものとする」

 (3)「本契約の執行過程において紛争が生じたときは、双方は協議して解決するものとする。協議できないときは、中国の法律に基づき中国の仲裁機関が仲裁を行うものとする」

 (4)「本契約の執行から生じ、又は本契約に関する全ての紛争について、双方は友好的な協議を通じて解決するものとする。協議できないときは、中国の仲裁機関で仲裁を行うことができ、また他の仲裁機関で仲裁を行うこともできる」

 (5)「契約から生じる紛争について、甲乙双方は協議して解決するものとする。協議できないときは、いずれの当事者も仲裁機関に調停若しくは仲裁を申立てることができ、又は法院に訴えを提起することができる」

 (6)「契約又は契約に関わる事項の履行から生じた紛争について、双方は協議して解決するものとし、協議して解決できないときは、中国の渉外契約の仲裁機関が判断する」

 (7)「本契約に関して、又は本契約の履行過程において発生した全ての紛争は、友好的な協議を通じて解決するものとする。解決できないときは、仲裁に付託するものとする。仲裁はWTO組織の中から売買双方が共同選択した中立国にて行うものとする」

 (8)「本契約に関し、又は本契約の履行過程において発生した全ての紛争は、友好的な協議を通じて解決するものとする。解決できないときは、青島市経済貿易仲裁委員会に提出し、その仲裁規則に従い仲裁を行うものとする」

 (9)「紛争が発生したときは、北京市の仲裁委員会で仲裁を行う」

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